研究概要 |
蛋白質の補因子の一つである鉄硫黄クラスターの細胞内における構築機構に関する研究は, 近年急速に進展し, 全貌が徐々に明らかとなってきている. また, 本構築機構には様々な蛋白質因子が関与することがこれまで明らかとなってきている, これら様々な蛋白質因子のうち, 葉緑体に局在する鉄硫黄クラスター構築のScaffold(足場)として機能する蛋白質に焦点を当て, その機能の詳細と構造に関する研究を進めてきている. 本研究では葉緑体内の鉄硫黄クラスター構築機構で足場として必須の機能を有するAtCnfU-Vの結晶構造解析を中心にして, 未だ明らかとなっていない足場蛋白質上での鉄硫黄クラスター構築機構, 足場蛋白質から基質への鉄硫黄クラスター転移機構を原子レベルで解明することを目的とし, 研究を遂行した. 鉄硫黄クラスターの転移中間体型と推定される構造に関して, 大型放射光施設でのX線回折データ収集とモデル構築, 精密化を行い, 構造決定に成功した. 並行して, この中間体型蛋白質結晶を用いてのX線吸収分光測定を大型放射光施設にて行った. 得られたスペクトルデータより, XANESスペクトルの解析, EXAFS解析等を行った. 結果, 結晶中に結合する鉄硫黄クラスターの構造, 鉄イオンの配位数, 鉄イオンの配位子といった構造情報を得る事に成功した. また, 結晶構造から得られた情報に基づき, 鉄硫黄クラスターの結合安定性に寄与すると推察されるアミノ酸残基への変異導入実験と安定性に関する解析を開始した.
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