染色体高次構造の1つであるテロメアクラスタリングは、1)減数分裂期において染色体の組換えや分配等に重要である、2)酵母からヒトまで高度に保存されている、と考えられている。近年、分裂酵母を用いた研究により、テロメアクラスタリングが減数分裂期のみならず体細胞分裂間期にも観察されることや、テロメアクラスタリングにRNAiが関与することが報告されてきた。しかしながら、体細胞分裂間期テロメアクラスタリングの形成メカニズムおよび生理的な重要性については不明な点が多い。本研究では、分裂酵母RNAi機構による体細胞分裂間期テロメアクラスタリングを中心に、(1)体細胞分裂間期テロメアクラスタリング機構におけるRNAiの機能解析、(2)新規テロメアクラスタリング関与因子の遺伝学的スクリーニング、を行なった。(1)では、RNAiがクラスタリング因子をテロメア領域ヘリクルートすることによりテロメアクラスタリングが起こるのではないかと仮説を立てた。本研究ではクラスタリング因子の有力候補として染色体対合に必須の複合体コヒーシンに着目し、細胞分裂期コヒーシンサブユニットの1つであるRad21を対象に実験を遂行した。Rad21のテロメア領域への局在化がRNAi依存的か否かをクロマチン免疫沈降法を用いて検討したところ、Rad21のテロメアへの局在化に関して、野生株とRNAi変異株との間に有意な差は観察されなかった。以上より、コヒーシンはRNAiがリクルートするクラスタリング因子ではないことが示唆される。(2)について、昨年度に引き続きスクリーニングを行い、新たにテロメアクラスタリングに関与すると予想される候補因子を単離した。
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