哺乳類で約10種類あるToll-likereceptor(TLR)は、それぞれ異なる病原体の構成成分を認識し、自然免疫を活性化する。近年、アメリカムラサキウニのゲノム上には222種類のTLRが多重遺伝子族を形成していることが分かった。本助成では、TLR多重遺伝子族の形成過程を調べる目的で、棘皮動物でもっとも原始的であるウミユリのゲノムを解析し、TLR多重遺伝子族形成の起源を調べることと、TLEの他に多重遺伝子族を形成する遺伝子群の探索を行った。 これまでにウミユリから精子を回収し、ゲノムDNAを精製した。現在、ウニ・ナメクジウオ・ゴカイTLRの細胞内ドメインTIRアミノ酸配列から、Degenerate primerを作成し、PCRによりウミユリTLFのDNA断片を回収しているところである。TLRの細胞内ドメインTIRに類似した配列をもつSEFIRドメインは、Interleukin-17receptor(IL-17R)に固有なドメインとして知られている。IL-17RとそのリガンドであるIL-17をウニゲノム上で探索したところ、IL-17Rは2個に対し、IL-17は35個見つかり、その多くはウニゲノム上でタンデムに重複していた。他の動物のゲノム内にIL-17遺伝子数がいくつあるか調べたところ、ヒトでは6個、ショウジョウバエでは0個に対し、TLRが多重遺伝子族を形成しているナメクジウオやゴカイでは、それぞれ19個、13個見つかった。現在、TLRとIL-17の多重遺伝子族形成の関連性についてより詳しく調べているところである。
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