研究概要 |
概日リズムはホルモン分泌等の基本的生理現象の周期を外環境に適応させ維持する機構である。この機構の異常は精神(時差症候群、不眠)、循環器(心筋梗塞)、呼吸器(喘息)疾患を含む多くの病態に関与している。最近では、近代化がもたらす飽食に伴うメタボリック症候群、老齢化と関連する骨粗鬆症や発癌といった現代生活を脅かす疾患が概日リズムと密接に関係していることが明らかになっている。 脊椎動物の概日リズムは全身の個々の細胞に存在する分子時計により制御されている。この分子時計においてCLOCKとBMAL1は二量体を形成し、転写活性化因子として機能する。過去10年の間にこの分子時計自体の制御機構についての研究は急速に進展してきたが、分子時計がどのように疾患に関与する様々な基本的生理機能を制御しているかについては現時点ではほとんど解明されていない。 申請者は(1)概日リズム制御蛋白質CLOCKが酵素活性を有すること及び(2)CLOCKがその酵素活性により二量体形成のパートナーであるBMAL1をアセチル化することを見出している。本研究は,これらの知見に基づいて、CLOCKがアセチル化により細胞周期制御因子や核内受容体の機能調節をするという仮説を立て研究を行った。 本研究において、申請者は免疫共沈降法及び質量分析解析によりCLOCKに結合する新規蛋白質として糖鎖付加酵素を見出した。また、CLOCKがこの糖鎖付加酵素をアセチル化することを見出した。さらに、CLOCKがこの糖鎖付加酵素により糖鎖付加を受けることを見出している。現在申請者はCLOCKによる糖鎖付加酵素のアセチル化及び糖鎖付加酵素によるCLOCKの糖鎖付加修飾の生理学意義について解析を行っている。 申請者は概日リズムの転写制御に関してERK/MAPKとp38 stress シグナル伝達系がクロストークすることを見出し、論文を投稿中である。
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