研究課題
幹細胞は、生体内において未分化状態を保ちながら増殖を続け、組織のもとになる細胞を供給することのできる特殊な細胞である。幹細胞を、失われた組織の修復などの医療分野へ応用するためには、幹細胞の維持と分化を自由にコントロールすることが必要である。本研究では、ショウジョウバエの生殖巣をモデルとし、生殖幹細胞を制御する微小環境(ニッチ)形成の分子基盤を解明することを目的としている。このような目的を達成する第一段階として、生殖幹細胞ニッチの原基細胞である体細胞性生殖巣原基を単離し、発現している遺伝子の同定を行っている。平成20年においては、以下の2つの解析を行った。1)ショウジョウバエ胚からのlateral mesoderm細胞の単離:申請者が作成した中胚葉でGFPマーカーを発現する胚から、セルソーターを用いて中胚葉細胞を単離するための条件を決定した。さらに、これらの細胞から、体細胞性生殖巣原基を生じるlateral mesodermを単離するために、GFPの発現量を指標としたいくつかの細胞分画を単離した。次に、各分画におけるlateral mesodermマーカーの発現を調べることにより、lateral mesodermを多く含む分画を同定した。2)体細胞性生殖巣原基の単離:体細胞性生殖巣原基は、正常胚では細胞数が限られている。また、特異的なマーカーが存在しないため、体細胞性生殖巣原基を単離することは非常に困難である。このような問題を解決するために、遺伝学的手法を用いて、lateral mesoderm全体を体細胞性生殖巣原基に分化転換させるような系統の作成を現在行っている。体細胞性生殖巣原基に分化転換したlateral mesoder mを1)で確立された方法により単離し、マイクロアレイ解析を行う予定である。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
The Journal of Cell Biology 183
ページ: 157-168