昨年度までにヒトのアフリカ集団、アジア集団、ヨーロッパ集団における1塩基多型(SNP)の集団毎の頻度データと病原となるアミノ酸変異のデータを、それぞれHapMapプロジェクトとSwiss-Protから収集した。このデータから190通りのアミノ酸変異のうち、1塩基の変異のみで起こる75種類のアミノ酸変異を考え、それぞれのアミノ酸変異について、病気のなりやすさの指標(Disease Index)を与える事が出来た。75種類のアミノ酸変異についてこのDisease Indexと、どれだけ集団中に変異となりやすいかの指標Polymorphism Indexとどれだけ集団中に固定しやすいかの指標Fixation Indexの相関を調べた。Disease Indexとこれら2つのIndexの間に有意な相関は見られなかった。これはDisease Indexの計算に用いた病原となるSwiss-Protのアミノ酸変異のデータがマーカーSNP(病気の遺伝的な原因でない変異)を多量に含むためと思われるので、これに用いるデータをNCBIのOMIMに変更した方が良いと判断した。また、Disease Indexの他に、タンパク質の立体構造に影響を与えるアミノ酸変異を集めたデータベースが公開されたので、これを利用しタンパク質の立体構造への影響の大きさを75種類のアミノ酸変異別に指標として与え、Damaging Indexを開発した。本研究では、75種類のアミノ酸変異について、どれだけその変異が病気になりやすいか、タンパク質の機能や構造に影響を与えるかの指標をそれぞれIndexの型で与える事に成功した。また、これらの指標にヒトの集団間で差があるかどうかは、まだ議論しなければならない事が明らかになった。
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