研究概要 |
脊椎動物の胚発生過程を特徴付けるオーガナイザーの機能解明は発生生物学上の大目標といえる。これまで多くの研究が行われ、様々な知見は蓄積しているものの完全に解明されたとは言いがたい。オーガナイザーの機能解明を目指して、申請者は新規オーガナイザー因子としてtphd2遺伝子を同定した。驚くべきことにtphd2遺伝子は神経伝達物質セロトニンの生合成経路での律速酵素tryptophan hydroxylase(以下、TPH)をコードしていた。現在までに阻害剤やアンチセンスオリゴを用いたtphd2遺伝子の機能阻害の結果、原腸胚期における腹側から背側への細胞移動(Convergence and Extension,以下、CE)に異常が認められている。本研究はtphd2遺伝子の胚発生過程での新規機能の解明をゴールとする。 今年度の成果としてはセロトニン合成酵素Tphd2の阻害剤および抗うつ剤(SSRI)の一種であるProzacが同じような胚発生異常を引き起こすことを見出した。この結果からセロトニンそのものが胚発生過程にかかわることが示唆される。また、RT-PCR法によりProzacが阻害するセロトニントランスポーター(serta)が原腸胚期に発現していることを見出した。以上の結果を踏まえると、予想外にもセロトニンが細胞内に取り込まれて、機能する可能性が考えられる。本研究から胚発生過程の新規知見を得ることができた。
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