研究概要 |
昨年度までの本研究により、nucleoredoxin(NRX)遺伝子ノックアウトマウスは周産期において致死であり、心臓においては隔壁形成不全などの異常が明らかとなっている。この表現形は報告されているDvl2やDvl3の遺伝子ノックアウトマウスの表現形と類似しており、NRXがDvlと相互作用する因子であることから(Funato et al., Nat.cell biol.(2006))関連が強く示唆された。そこで、NRX遺伝子ノックアウトマウスにおけるDvlの状態を調べるべく、ウェスタンブロットにより蛋白質量を測定したところ、野生型マウスと比較して有意な減少が見受けられた。実際に野生型、及びNRX遺伝子ノックアウトマウスの胎児から繊維芽細胞を採取し^<35>Sでパルスラベルしたところ、Dvlの蛋白質安定性がNRX遺伝子ノックアウトマウスでは明らかに低下していた。DvlはCullin3/KLHL12を介したユビキチン・プロテアソームシステムによって分解を受けていることが報告されている(Angers et al., Nat.cell biol.(2006))。そこで、マウス胎児繊維芽細胞におけるDvlのユビキチン化度合いを確認したところ、NRX遺伝子ノックアウトマウス由来の胎児繊維芽細胞では有意にDvlのユビキチン化が亢進していることが判明した。これらの実験結果より、NRX遺伝子ノックアウトマウスにおいてはDvlのユビキチン化が起こりやすくなっており、その結果Dvlの蛋白質安定性が低下しDvlの量が減少することで心臓などにおける形態形成に異常をきたしているものと想定される。
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