研究課題
ゲノムワイドな解析からAtg16Lの1塩基多型と原因不明の炎症性腸疾患であるクローン病との関連が報告された。クローン病に関連するAtg16Lの1塩基多型はC末端側のWDリピートドメイン中に存在する。クローン病患者では過剰な炎症反応が引き起こされているが、そのメカニズムはこれまで不明であった。そこで我々は、Atg16Lのノックアウト(KO)マウスを作成し、炎症誘導制御におけるAtg16Lの役割を解析した。グラム陰性菌に対する自然免疫応答におけるAtg16Lの役割を調べるため、野生型とAtg16L-KOのマクロファージをグラム陰性菌のエンドトキシン成分であるリポ多糖で刺激したところ、Atg16L-KOの細胞は野生型に比べてIL-1βを過剰に産生した。IL-1βはリポ多糖などの刺激により転写が亢進され未成熟な前駆体として翻訳された後に、カスパーゼ-1により切断を受け、成熟型のIL-1βとなり細胞外へと分泌される。また、カスパーゼ-1自身もインフラマソームによる切断を受けて活性型(成熟型)へと変換されている。Atg16L-KOの細胞において、IL-1β産生のどの段階に異常があるのか検討したところ、カスパーゼ-1を活性化するインフラマソームが異常に活性化されていることが明らかになった。この結果はオートファジーによる炎症反応抑制機構を明らかにした初めての報告である。さらに、Atg16L-KO細胞を用いて、Atg16Lの機能解析も平行して行った。予想に反して、我々はAtg16Lのクローン病型1塩基多型、またはWDリピートドメインの欠失は飢餓誘導性または病原性微生物に対するオートファジー能に全く影響を与えない事を見いだした。これより、Atg16Lのクローン病型1塩基多型は既知のオートファジー経路に大きな影響を与えることなく、過剰な炎症反応を引き起こしていると考えられる。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Mol Biol Cell (In press)
Cell Microbiol. (In press)
J Biol Chem 284
ページ: 32602-32609
Nature Cell Biology 11
ページ: 1433-1437
Proc Natl Acad Sci USA (In press)
http://www.biken.osaka-u.ac.jp/act/act_yoshimori.php