本研究では、蛋白質デザインに基づいた、ペプチドの自己組織化を模倣した球状蛋白質(Peptide Self-Assembly Mimics;PSAM)を用いて、アミロイドなどポリペプチドの自己組織化によって生成するナノ繊維の形成過程を明らかにすることを目指している。本年度では初めに各種変異体の発現・精製系を構築し、基礎的なデータの測定から行った。まず、PSAMのフォールディング測定の解釈を容易にするため、C末端ドメインが欠落した変異体を構築した。この変異体は溶液中で単量体として安定であった。原子レベルの分解能で分子構造を決定するため、蛋白質の結晶化を行った。結晶化スクリーニングの結果、良好な結晶の生成に成功し、高エネルギー加速器研究機構PFにて2.2Åの反射データを得ることが出来た。結晶は非対称単位中に蛋白質を四分子含んでおり、これらの分子構造の間で単層βシート領域に構造の違いが観察された。現在、詳細な構造解析を進めている。また、ストップトフロー蛍光装置を用いてPSAMのフォールディング測定を行い、三状態の巻き戻り反応であることを見いだした。これは平衡測定において以前に報告された結果と一致しており、平衡測定の中間体と巻き戻り反応の中間体が類似の構造を持つことが予想される。PSAMのN末端ドメインには蛍光プローブとなるトリプトファン残基が無いため、詳細な測定を目指してトリプトファン残基をN末端ドメインに導入した変異体を構築した。
|