本研究課題一年目の今年は、異物接種に対するマガキパターン認識レセプター(PRP)の遺伝子発現を、当初の予定通り行った。その結果、細菌細胞壁主成分ペプチドグリカンを認識するペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)4種類と、真菌細胞壁主成分のβグルカンを認識する認識タンパク質(βGBP)2種類では、異物(真菌、及び細菌)接種に対して遺伝子発現が増加する傾向は、少なくとも接種72時間では認められなかった。その一方、血球で発現するPGRPの一種、CgPGRP-Lではグラム陽性、陰性細菌のどちらに対しても発現が誘導されることが分かった。 さらに、これらマガキPRPの詳細な性質を調べるために、リコンビナントタンパク作成を試みた。大腸菌を用いて合成したβGBP二種類は共にβグルカン結合性を示し、さらに、βグルカンの一種、ラミナリンと共通して血球内のphenoloxidase系を活性化することが分かった。Phenoloxidaseは、節足動物においては異物侵入に対する初期生体防御反応としてよく知られており、二枚貝でも同様の系がβGBPによって誘起されることが示唆された。また、細菌接種で誘導される血球産生CgPGRP-Lにっいては、バキュロウイルスと昆虫細胞を用いた系で作成を試みた。スクリーニングの結果、昆虫細胞での産生が認められたため、リコンビナント産生系の確立ができた。今後は大量に産生し、性質評価を進めて行く。
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