研究課題
本研究課題二年目である今年度は、細菌認識に深く関与するマガキのペプチドグリカン認識タンパク質(CgPGRP)、CgPGRP-s1sと、真菌認識に関与するβ-グルカン認識タンパク質(Cg-βGBP-1、-2)の機能解析を進めた。Cg-βGBP-1と-2に関しては大腸菌由来の組替えタンパク質を用いて検討した結果、β-グルカン結合性はあるが、glucanase活性や抗微生物活性はないというCg-βGBP-1と-2に双方に共通して見られる性質を明らかにした。その一方で、Cg-βGBP-2はphenoloxidase活性に関与するがCg-βGBP-2は関与しないことも分かった。従って、これらは類似した分子ではあるがマガキ体内では異なる生理機能を担うことが示唆された。CgPGRPの生理機能解明については、Hisタグを付加したCgPGRP-s1sをメタノール資化性酵母Pichia pastorisで発現させ、抗菌活性試験及びペプチドグリカン(PGN)結合性試験に供した。CgPGRP-s1sにはβ-defensin様ドメインが存在するため抗菌活性が期待されたが、使用した4種類の供試菌に対する成育阻害効果は認められなかった。精製ペプチドグリカン(PGN)を用いた結合性試験では、CgPGRP-s1sはDAP、及びLysの両PGNタイプに対して結合性を示したが、生菌に対する結合性は認められなかった。これらのことから、CgPGRP-s1sは抗菌タンパク質である脊椎動物型PGRPではなく、無脊椎動物に共通するPGN認識担当タンパク質であることが分かった。また、生菌細胞壁を直接認識するのではなく、構造的に変性した細胞壁を認識すること、つまり認識時に恊働成分が存在すると想定された。本研究課題を通して、二枚貝の異物認識システムは他の無脊椎動物と類似しているものの、これまでに知られていないメカニズムをもつことが示唆された。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Developmental and Comparative Immunology 34
ページ: 445-454
Fish and Shellfish Immunology (未定, In press)