研究概要 |
ガ類昆虫の超高感度な性フェロモン受容の分子機構の解明を目的に、カイコガオスを対象として性フェロモン受容に関与する性フェロモン受容体(BmOR1)、フェロモン結合タンパク質(BmPBP)、sensory neuron membrane protein-1(BmSNMP1)の解析を行った。まず、BmSNMP1遺伝子の性フェロモン受容細胞での発現を検証するために、in situhybridizationによりオス触角における発現細胞の同定を試みた。 BmOR1またはPBPとの2重in situ hybridizationでは十分なシグナルが得られず、性フェロモン受容細胞での発現の確認にはいたらなかったものの、BmSNMP1遺伝子のみのhybridization実験において、触角の感覚上皮の細胞群で発現がみられ、嗅覚受容細胞での発現が推測された。つづいてBmSNMP1の機能解析を目的とし、BmOR1とBmOR2とBmSNMP1をアフリカツメガエル卵母細胞で共発現させ、性フェロモンに対する電気的応答の計測を行った。 BmSNMP1の発現の有無で、応答閾値に有意な差異は認められず、少なくともアフリカツメガエル卵母細胞発現系においては、BmSNMP1単独では性フェロモンに対する応答感度上昇には十分でないことが示唆された。また、BmOR1と異なるリガンド特異性をもつコナガ性フェロモン受容体であるPxOR1,PxOR2をBmSNMP1と共発現させた卵母細胞において、PxOR1のリガンド特異性にBmSNMP1の発現の影響はみられなかったことから、BmSNMP1はリガンドの選択性に関与しないことが示唆された。並行して、3遺伝子のノックダウン系統の作出を試みたが、現在までに系統の樹立には至っておらず、来年度引き続き系統の樹立を行う計画である。本研究の成果に関連して、原著論文を1編(Mitsuno et al., 2008)、昆虫の嗅覚情報処理機構を考察した総説を1編(Kanzaki et al., 2008)発表した。また成果の一部は日本応用動物昆虫学会の学術会議において報告した。
|