日本盲導犬協会において、盲導犬適性に関わる気質を同定・評価すべくアンケート評価および行動実験を行い、候補遺伝子(神経伝達物質関連遺伝子)多型との関連を調べた。研究成果の概要は以下の通りである。 対象個体・盲導犬候補個体のうち、盲導犬となった固体(合格)および稟性的な理由で盲導犬になれなかった個体(不合格)を対象とした。結果の再現性を確認するために、対象個体を2グループに分けた(グループA:合格41頭、不合格37頭; グループB:合格25頭、不合格41頭)。 アンケート評価と訓練結果の関連性[論文投稿準備中]・アンケート項目について因子分析を行ったところ、グループA・Bともに5因子が抽出された。第1因子"注意力散漫"・第2因子"感受性"・第3因子"従順さ"は内的整合性が高く、2グループ間で保存されていた。・第1〜3因子のスコアを訓練結果と比較したところ、グループA・Bともに"注意力散漫"は不合格群の方が有意に高く、"従順さ"は合格群の方が有意に高かった。 行動実験とアンケート評価の関連性・犬舎、隔離、人の入室、興奮刺激提示を含む行動実験を行い、心拍数を測定した。・各ピリオドにおける平均的心拍数や心拍数変化と第1〜3因子のスコアを比較したところ、一部に有意な関連が認められ、各因子の客観的な指標になることが示唆された。 遺伝子多型とアンケート評価の関連性・候補遺伝子多型のうち、11遺伝子26多型について各個体の遺伝子型を決定した。・遺伝子型と第1〜3因子のスコアを比較したところ、GAD1遺伝子上のSNP (一塩基置換)が゛"感受性"と、GLT遺伝子上のSNPが"従順さ"と関連する傾向がみられた。 以上から、盲導犬適性には"注意力散漫"が低く、"従順さ"が高いことが重要であり、アンケート評価により安定して評価できることが示された。これらの気質は生理学的反応や遺伝子多型とも関連している可能性があるが、今後その再現性を確かめる必要がある。
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