日本盲導犬協会において、盲導犬適性に関わる気質を同定・評価すべくアンケート評価および行動実験を行い、候補遺伝子(神経伝達物質関連遺伝子)多型との関連を調べた。また、得られた指標を複合的に扱うことで、盲導犬適性および気質の予測を行った。本研究においては、盲導犬候補個体のうち、盲導犬となった個体(合格)および稟性的な理由で盲導犬になれなかった個体(不合格)を対象とし、結果の再現性を確認するために、対象個体を2グループに分けた(Aグループ:78頭;Bグループ:75頭)。 盲導犬適性に関わる気質因子とその評価 ・訓練上によるアンケート評価により、盲導犬適性に一貫して関わる気質因子として"注意散漫"および"従順さ"が同定された。また、訓練開始2ヶ月目に実施した行動実験から、"注意散漫"は犬舎ピリオドにおける平均心拍数と、"従順さ"は犬舎ピリオドにおける伏せ時間・起立時間と弱いながらもい一貫した関連を示すことが分かった。 ・神経伝達物質関連遺伝子における多型のうち、10遺伝子26多型を対象として、気質因子との関連解析を行ったところ、"注意散漫"とはHTRIB遺伝子およびSLCIA2遺伝子上の多型が、"従順さ"とはSLCIA2遺伝子およびDBH遺伝子上の多型が2グループを通して一貫した関連を示していた。 盲導犬適性および気質因子の予測 ・アンケート評価、心拍数、行動反応を用い、名義ロジスティック回帰分析による適性予測を行ったところ、予測精度は82.5%であった。予測式を新たなグループにあてはめると、80.6%の的中率が得られた。 ・心拍数、行動反応、遺伝子多型情報を用い、重回帰分析による各気質因子スコアの予測を行ったが、いずれも予測精度は低かった。 以上より、盲導犬適性に関わる気質として"注意散漫"および"従順ざ"が同定され、気質因子・行動実験データを用いることで精度の高い適性予測が可能であった。今回、気質因子の予測精度は低く、今後は気質因子に焦点をあてた行動実験の開発が必須であることが明らかとなった。また、気質因子と関連を示す多型が検出されたが、その作用機序を調べるとともに、ゲノムワイド関連解析(現在12個体で解析中)による新しい多型の同定も必要であると考えられる。
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