研究課題
古くから土壌微生物間のケミカルコミュニケーションの存在が示唆されている。土壌微生物の中でも着目したのは放線菌とカビである。この二者は原核生物と真核生物で進化的に大きく異なるが、よく似た生活環を有している。寒天培地で培養を行うと寒天培地下にまず基底菌糸を形成し、その後気菌糸を空中に伸ばす。最終的に気菌糸は形態変化-分節を起こし胞子を形成する。放線菌やカビにとって胞子形成は、乾燥や栄養源の枯渇といった環境変化への適応のための重要な生存戦略である。申請者の最近の研究によって抗生物質様物質が気菌糸形成を誘導するということが明らかとなった。この結果は、ある種の抗生物質がもともとは自己制御因子であった可能性を示唆する。また、従来のスクリーニング法では抗菌活性など人間にとって有益な活性を持つ物質以外は発見されないことから、まだ微生物にとって重要な生理活性物質が数多く未発見のまま存在すると考えられる。そこで、気菌糸誘導活性を指標に気菌糸誘導物質の探索を行った。野外の土壌からISP2培地を用いて、放線菌34株とカビ9株を単離した。さらにNBRCから分与を受けた放線菌20株を加えた計63株に関して気菌糸誘導物質のスクリーニングを行った。クロストーク法およびアセトン抽出物に関してモデル放線菌Streptomyces coelicolorを試験生物として用い気菌糸誘導活性の生物試験を行った。その結果、S. albusを始めとして計7株のアセトン抽出物に気菌糸誘導活性が見られた。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 73
ページ: 228-229