研究課題
土壌微生物間のケミカルコミュニケーションの存在は昔から示唆されている。その中でも着目したのは放線菌とカビである。この二者は原核生物と真核生物で進化的に大きく異なるが、よく似た生活環を有している。寒天培地で培養を行うと寒天培地下にまず基底菌糸を形成し、その後気菌糸を空中に伸ばす。最終的に気菌糸は形態変化-分節を起こし胞子を形成する。放線菌やカビにとって胞子形成は、乾燥や栄養源の枯渇といった環境変化への適応のための重要な生存戦略である。申請者の最近の研究によって抗生物質様物質が気菌糸形成を誘導するということが明らかとなった。この結果は、ある種の抗生物質がもともとは自己制御因子であった可能性を示唆する。また、従来のスクリーニング法では抗菌活性など人間にとって有益な活性を持つ物質以外は発見されないことから、まだ微生物にとって重要な生理活性物質が数多く未発見のまま存在すると考えられる。そこで、本研究は気菌糸誘導シグナル物質の探索と機能解析を目指すものである。実際にスクリーニングを行ったところ、放線菌Streptomyces hawaiennsisおよびS.aureofaciensの有機溶媒抽出液に気菌糸誘導活性を見出した。さらに各種カラムクロマトグラフィーを用いた活性物質の分離・精製を行ったところ、それぞれから新しい活性物質の単離に成功した。さらにMSおよびNMRスペクトルを用いた化学構造の解析を行ったところ、部分化学構造の決定に成功した。
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http://www.ipc.shizuoka.ac.jp/~askodan/