近年、異常気象に起因する豪雨によってため池や堤防などの土構造物が崩壊し、流域環境、農村、農業生産に甚大な被害を与えている。決壊原因の多くは越流による堤体表面の侵食及びパイピングなどの堤体内部の侵食である。現在、ため池や堤防などの土構造物のストックマネジメントは重要な社会的要請であり、本研究もこれに貢献することを全体的な課題と位置づける。その全体的課題に向けた本研究の具体的な目的は、フィルダム、ため池、堤防を中心とした土構造物のストックマネジメントのために.構造物の変形に関する安定性だけでなく、侵食も考慮した総合的な機能評価手法を開発することにある。 以上の目的のため、本研究は以下の3つのタスクを行うことを計画している。 1.土構造物の内部侵食・変形同時解析手法の開発 2.堤体材料の表面侵食特性の把握 3.表面侵食特性を把握した材料を用いての越流堤実験 現在のところタスク1の半分とタスク2を終えた段階にある。タスク1については内部侵食の解析手法が完成し、既往の研究との照合ややや大規模な計算を終えている.次年度では今年度に完成した内部侵食の解析法に土の変形解析を連成させてタスク1を完了する。タスク2の堤体材料の表面侵食特性を把握するための実験はデータを取り終え、現在論文を執筆中である。次年度はタスク2で得た結果を基にタスク3の越流堤実験を行う。最終的にはタスク1から3の成果をまとめることで侵食を考慮した水利土質構造物の機能診断指針を提案する。
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