本研究では生物農薬としての開発が期待されているニッポンクサカゲロウ(Chrysoperla nipponensis)から、昆虫特異的に作用する麻痺活性成分を単離し、その構造を明らかにすることを目指した。前年度は、まずニッポンクサカゲロウとその餌となるエンドウヒゲナガアブラムシを飼育し、はき戻し液をいつでも回収できる環境を整えた。そして、その飼育したクサカゲロウから採取したはき戻し液を前処理した後、各種クロマトグラフィーに供して活性画分を回収した。なお、この活性画分を注射投与したイエバエ(Musca domestica)は麻痺状態から回復することがなく、そのまま死に至ることを確認することができた。今年度はさらに改良した精製方法を用いて活性画分を回収し、そこに含まれている目的とするタンパク質由来のバンドを切りだし、トリプシンによりゲル内消化を試みた。そして、得られたペプチドをLC-MSで分析することにより、このタンパク質の一次構造を解析した。本研究で得られたアミノ酸の部分構造をもとに、この毒素のアミノ酸配列をコードする遺伝子を解明することでき、最終的に全一次構造を明らかにすることができる。また、今年度は種々の有機合成化合物の生理活性を測定し、新たな活性を示す骨格を見出すことができた。これら本研究の成果は、将来的に安全な昆虫制御剤の開発へとつながることが期待される点で重要なものと考えられる。
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