研究概要 |
本研究は,植物生産システムの高度化を目的として,(1)施設内蒸散要求度の確立による栽培管理性の向上,(2)収穫対象器官の局所温度制御による高品質化,(3)地中貯水パイプ蓄放熱シズテムの改良・応用による施設暖房の省エネルギー化の3課題に取り組んでいる. (1)の研究に関しては,施設内植物群落に対する蒸散要求度を理論的に定義するために,Kitano et al.(1990)が提案した個葉に対する蒸散要求度のスケーリングアップを検討した.さらに,温室内に設置可龍である小型・高精度パン蒸発計を設計・自作し,温室内の蒸発速度の日変化のモニタリングを開始した. (2)の研究に関しては,地中貯水パイプ蓄放熱システムを,生育中スイカ果実の局所温度制御(高温回避)に応用した.ハウス内の日中の最高気温は約40℃程まで上昇したが,果実にはシステムによって得られた空気(日中の最高気温は30℃以下)を,ダクト等を利用して送風した.それによって,とくに日中の果皮内の温度は約4〜5℃低下した.9月下旬に収穫した果実は,糖度(Brix)が局所温度制御によって上昇し,とくに果実の中心部よりも果皮に近い外側の部位において顕著な上昇が見られた. (3)の研究に開しては,温室の保温性を強化するために,内張りの空気膜化を新たに施し,地中貯水パイプシステムとの組み合わせによる省エネルギー施設加温を試みた.その結果,石油暖房機を使用せずとも,外気温(0℃付近)より湿室内気温は7〜8℃程度高く推移し,省エネルギー施設加温システムの有用性を示唆した.
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