研究概要 |
本研究は,植物生産システムの高度化を目的として,課題1:温室内蒸散要求度の解析とその植物水分動態への影響の評価,および課題2:地中貯水パイプ蓄放熱システムの改良・応用による温室暖房の省エネルギー化の2課題に取り組んでいる. 課題1の研究に関しては,新たに開発した超音波式小型パン蒸発計の特性試験として,温室内の蒸散要求度の指標となるパン蒸発速度Epanの特徴を解析し,またトマト植物の蒸散速度Trとの関係を比較した.Epanは1時間毎の評価が可能となり(日変化評価),気象要素に対するEpanの感度も解明された.さらに,1時間毎のEpanとTrとの間には正の相関がみられた.これらの結果から,新規開発した超音波式パン蒸発計は,温室内蒸散要求度の動態解析や植物の蒸散速度の推定に有用であることが示唆された. 課題2の研究に関しては,前年度に確立した温室保温性を強化するための内張り空気膜と地中貯水パイプシステムとの組み合わせによる省エネルギー温室加温を試みた.その結果,石油暖房機を使用せずとも,外気温(0℃付近)より温室内気温は7℃程度高く推移した.また,石油暖房機の夜間設定温度を10℃とした場合には,隣接する対照区ハウスと比較したところ,約47%の石油使用量を削減できた.これらの結果から,地中貯水パイプ蓄放熱システムによる省エネルギー温室暖房の有意性が示唆された. 以上のように,本研究で実施した植物生産現場における熱・物質輸送プロセスの評価と応用の一連の研究成果は,植物生産システムの高度化へ寄与するものと考える.
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