研究課題
本研究の目的は、これまで10年にわたって蓄積されてきたヒノキ林における炭素収支のデータの整備を図ること、また、それらのデータを陸域生態系モデル、衛星リモートセンシングと組み合わせることで、広域的な炭素収支量の定量化、また、その将来予測を行う事を目的としている。昨年度までに実施した観測データの整備手法は、国内外の観測データを整備する際に有効な手法であると思われたため、整備手法を普遍的なツールとして技術を集約して公開した。公開したツールはGUI (Graphical User Interface)を有し、「既に国内の複数の研究者に利用されており、今後、いくらかの改善点について修正を行い、国内外の研究者への普及に努める。昨年度までにパラメータリゼーションを完了させた陸域生態系モデル(BIOME・BGCモデル)を用いて、ヒノキ林における炭素収支変動のメカニズムを明らかにした。その結果、長期的な時間スケールでは植栽・伐採などの過去の攪乱の履歴が炭素収支を決定する要因として重要であることが明らかとなった一方で、その年々変動については気象要素、特に夏季の日射量、気温が重要であることが明らかとなった。モデルの検証を行なったヒノキ林では、日射量が多く、気温の低い夏ほど炭素吸収量が大きくなることが明らかとなった。長期的な炭素吸収において撹乱が重要であることが明らかとなったため、国内のヒノキ植林地の炭素吸収量を最大とするための管理法についてモデルを用いた感度解析から検討した。その結果、比較的大規模な伐採・植栽を100年以上の間隔をあけて実施すると、植林地の炭素固定量を増加させることが出来る事が示唆された。その際に、植林地を炭素の吸収源とするためには伐採された木材の管理方法が重要である事が示唆された。
すべて 2010 2009
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Biogeosciences 7
ページ: 959-977
J.Agric.Meteorol. 65
ページ: 315-325