OCDラットが呈する骨軟骨形成不全症は常染色体単一劣性の遺伝様式で伝達され、その原因となる遺伝子ocdはラット第11番染色体上に位置付けられている。本年度はOCDラットにおいて骨軟骨形成不全症が生じる機構を明らかにするために、軟骨細胞の分化に関わる分子の発現を免疫組織化学により調べた。その結果、ocd/ocd胎子では肥大軟骨細胞のマーカー分子であるX型コラーゲンの発現時期が野生型胎子よりも一日遅れており、軟骨細胞の分化が遅延していると考えられた。また、ocdが位置付けられている染色体上の領域内に存在する遺伝子の中から、有力な候補遺伝子として考えられる数個の遺伝子に関して、胎齢16.5日の野生型胎子の前肢および頭部における発現をRT-PCR法により調べた。その結果、前肢および頭部のどちらにおいてもGolgb1遣伝子の発現が認められた。次にocd/ocdのGolgb1遺伝子のcDNAをRT-PCR法により増幅し、コーディング領域の塩基配列を決定した。その結果、OCDにおいてGolgb1遺伝子の第13エクソンに10bpの挿入突然変異が同定された。この挿入突然変異をはさむようにプライマーを設計し、ゲノムDNAを鋳型にしたPCR.を行ったところ、本挿入突然変異はOCD特異的であり、ocdと完全に連鎖していることが明らかとなった。Golgb1遺伝子は小胞輸送に関わるゴルジ体タンパク質giantinをコードしており、C末端のアミノ酸配列がゴルジ体への局在に必要である。OCDでは挿入突然変異によるフレームシフトのために中途終止ロドンが生じ、ゴルジ体への局在に必要不可欠な配列を含むgiantinのC末端側約2/3を欠損していると推測される。したがってocd/ocdが呈する骨軟骨形成不全症を含む表現型はgiantin(Golgb1遺伝子)の機能喪失変異に起因すると考えられる。
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