糖尿病モデル動物を用いて糖尿病の病態推移において止血・血栓機構にどのような変化がおきているかを検討することを本研究の目的とした。本年度は新規の糖尿病モデル動物であるWBN/Kob-Lepr^<fa>ラットに着目し、その病態特性を解析した。 7週齢以降、週齢とともにWBN/Kob-Lepr^<fa>ラットの体重および血糖値はWBN/Kob(野生型)に比べ高値を示した。21週齢におけるにWBN/Kob-Lepr^<fa>ラットの脂肪量(精巣周囲)は野生型に比べ2倍以上に増加していた。また、この時点で糖負荷試験(ivGTT)を実施して、血糖および血中インスリン値の変動を調べたところ、WBN/Kob-Lepr^<fa>ラットの血糖値および血中インスリン値は野生型に比し、高く維持された。このことから、WBN/Kob-Lepr^<fa>ラットの糖尿病の主因が1型糖尿病のインスリン分泌不全ではなく、2型糖尿病に特徴的なインスリン抵抗性によることが示唆された。したがって、WBN/Kob-Lepr^<fa>ラットはメタボリックシンドロームの中核をなす肥満を伴う2型糖尿病モデルであると考えられる。一方、糖尿病患者は血栓傾向にあると考えられており、糖尿病患者の心血管イベントの一因となっている。そこで血栓バイオマーカーの一つである血液凝固時間を測定したところ、外因系凝固時間(PT)および内因系凝固時間(APTT)とも野生型に比べWBN/Kob-Lepr^<fa>ラットで有意に短縮しており、WBN/Kob-Lepr^<fa>ラットが血栓傾向にあることが明らかとなった。 これらの成績からWBN/Kob-Lepr^<fa>ラットはヒトの肥満を伴う2型糖尿病との類似性が高く、新規の抗糖尿病薬およびメタボリックシンドローム治療薬の創薬研究において、インスリン抵抗性および血糖低下、さらには心血管イベントに対する薬効評価にも有用性が高いことが示唆される。
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