研究概要 |
1目的 牛舎には様々な野生動物が侵入しており、それらがウシにとってヨーネ病やサルモネラ症といった感染症の感染源となっている可能性があるが、その実態は不明である。そこで、実際に牛舎で様々な野生動物を収集し、その保菌実態を明らかにすることで、リスクを検討する。 2方法と結果 (1)野外からの材料収集 十勝地域の14畜産農場を調査地とし、農場内や農場周辺で学術捕獲されたネズミ類163頭、トガリネズミ類5頭、また有害鳥獣駆除されたハシボソガラス14羽、ドバト1羽、キツネ5頭、さらに死体を拾得したスズメ1羽を材料とした。 (2)病原体の分離 収集された材料の腸内容からヨーネ菌の、腸内容および脚表面からサルモネラ菌の分離を試みた。方法は既存の微生物学的手法によった。 結果、ハシボソガラス1羽(7.1%)の脚からサルモネラ菌が分離された。 (3)疫学マーカーの解析 分離されたサルモネラ菌の血清型を定法に従い判別したところ、Braenderup(6,7,14:e,h:e,n,z15)であった。また、薬剤感受性をKirby-Bauer法で試験したところ、用いた薬剤(ABPC・CEZ・CTX・GM・KM・SM・TC・CPFX・NA・ST・CP・FOM)の全てに感性であった。 3考察 血清型Braenderupは北海道のウシからも分離例があり、飼料を狙って日常的に牛舎に入り込んでいるカラスが、ウシにとってサルモネラ菌の感染源となっている可能性が裏付けられた。
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