本年度は、コナギMonochoria vaginalisにおけるアブシジン酸の生合成および不活性化に関与する遺伝子の部分配列を決定するとともに、コナギ種子から植物ホルモンを抽出し、その内生量をLC/MS/MSで定量する方法を確立した。部分配列を決定した遺伝子は、アブシジン酸の生合成に関与するNCED遺伝子と、アブシジン酸の不活性化に関与するCYP707A遺伝子およびABA-GT遺伝子である。これらの遺伝子の部分配列は、公表されているNCED遺伝子、CYP707A遺伝子、ABA-GT遺伝子の塩基配列を参考にプライマーを設計し、コナギ種子から抽出したRNAを逆転写したcDNAを鋳型としてPCRを行い決定した。次に、LC/MS/MSを用いたコナギ種子のホルモン分析の結果から、低温湿潤処理をした種子では、ABA-GT遺伝子が関与するグルコシル化経路により内生アブシジン酸量が低下していることが示唆された。低温湿潤処理には、コナギ種子の休眠を覚醒する効果があることから、コナギ種子の休眠覚醒に、ABA-GT遺伝子を介したABAの不活性化経路が関与している可能性が考えられる。21年度は、得られた部分配列をもとにRACE法により各遺伝子の全長鎖を決定しリアルタイムPCRによる発現解析を行うとともに、LC/MS/MSを用いたホルモン分析により種子の休眠状態および発芽応答と内生ホルモン量の関係を明らかにする。
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