コナギ(Monochoria vaginalis)種子の休眠状態と種子中の内生ホルモン量の関係を調べるため、ABAとジベレリン(GA1およびGA4)、ABAの代謝産物であるファゼイン酸、ジヒドロファゼイン酸、ABAグリコシルエステルのコナギ種子中の内生量をLC/MS/MSで一斉解析する方法を確立した。そして、低温湿潤処理による休眠覚醒の過程で、グルコシル化経路によりABAが不活性化し種子中の内生ABA量が低下することを明らにした。このとき、ファゼイン酸・ジヒドロファゼイン酸の増加はなく、内生ABA量低下への酸化経路の関与は認められなかった。次に、内生ABA量調節の遺伝的機構を明らかにするため、アブシジン酸(ABA)の生合成および不活性化に関与する遺伝子の全長鎖を決定した。全長鎖を決定した遺伝子は、ABAの生合成に関与する9-cis-エポキシコロテノイドジオキシゲナーゼ(NCED)遺伝子と、ABAの不活性化に関与するグルコシル化酵素(ABA-GT)遺伝子である。また、戸外土中に埋土したコナギ種子を2ヶ月に一度回収し発芽試験に供試することで、コナギ種子の休眠サイクルを明らかにした。そして、発芽試験とは別に、発現解析およびホルモン分析に供試する種子もあわせて採取した。今後は、これらの材料を用いて、上記のNCED遺伝子およびABA-GT遺伝子の発現解析や内生ホルモンの一斉解析を行うことで、コナギ種子の休眠サイクルと遺伝子発現および内生ホルモン量の関係を明らかにする。
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