本研究の目的は、農産物直売所における需給ミスマッチを改善するため、定量的に需給の動向を把握し、需要予測を行うことである。本年度は、前年度対象とした直売所AのPOSデータから、2004年から2007年の販売点数を日別に集計し、TCSI分解法を援用して日次系列モデルを推定した。なお、モデルは乗法モデルを採用し、日次データを分析するために、曜日変動を要素変動に加えて分析した。 結果から次の点が指摘できる。 1季節変動は、日帰りレジャー需要の変動と直売所Aにおいて人気がある品目の出荷時期・旬に影響されていることが示唆された。特に来店者数の変動は人気品目の旬に強く影響されているといえよう。一方、品揃え(品目数)の影響は、オープン当初は強かったが、近年弱まってきているといえる。 2日々の需要量の変動は、(1)曜日、イベントなどその日の特徴、(2)天候、(3)品目数、(4)経済指標などによって、ある程度説明可能である。曜日変動と季節変動を除去した販売点数の変動について、次の点が指摘できる。第一に、品目数が多い日に販売点数が多い。第二に、祝日、イベント時に販売点数が非常に多い。ただし、祝日後2日間は販売点数が低迷する。第三に、販売点数は、上に凸の2次曲線を描きながら増加傾向にある。これは、オープン当初は順調に売上を伸ばしてきたが、近年伸び悩み傾向にあることを示している。第四に、天気が良い日に販売点数が多く、天気が悪い日に販売点数が少ない。第五に、ガソリン価格の高騰時に販売点数が少なく、一方、物価の上昇時や景気の悪化時には販売点数が多い。このことから、販売点数は、一般経済の動向に影響されるといえる。 なお、本年度の研究成果は、関連学会にて口頭報告を行った(日本農業市場学会2009年度大会個別報告、2009年7月、三重大学)。
|