研究概要 |
青果物の加工貯蔵の過程において,内在性諸酵素の働きを抑制するために,ブランチングは不可欠な操作である。従来,野菜類のブランチングは熱湯に浸漬する方法で処理されることが多いが,浸漬操作による水溶性成分および色素の溶脱,組織の軟弱化などの品質劣化が問題となる。一方,内部加熱方式であるマイクロ波処理は,浸漬操作を行わないため,熱湯浸漬処理で発生する品質劣化の諸問題を解決できる可能性があると考えられる。さらに,マイクロ波処理は熱湯浸漬処理と比べて処理時間が圧倒的に短いため,低コスト・低エネルギで処理できる効果も期待される。本年度は調理用トマトを用い,マイクロ波処理および熱湯浸漬処理を行った際のパーオキシダーゼ失活状況,リコピン,糖,アスコルビン酸および色彩変化について調査した。その結果,マイクロ波処理においては,熱湯浸漬処理と比べて約半分の処理時間でパーオキシダーゼが失活することがわかった。品質に関する検討から,リコピンおよび糖の残存率は,マイクロ波処理と熱湯浸漬処理でほとんど差は見られないこと,一方,アスコルビン酸減少率および色彩変化はマイクロ波処理で軽減され,マイクロ波処理による品質保持効果があることが確認された。これは,マイクロ波によるブランチング処理時間の短縮および内部加熱作用によるものと考えられた。以上の結果より,調理用トマトのブランチングにおいて,マイクロ波ブランチングが有効であることが示唆された。
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