ビタミンC(VC)は、水溶性の強力な抗酸化物質である。昨年度、VCを合成できないSMP30/GNLノックアウト(KO)マウスおよびリアルタイムバイオグラフィー法を用いて、VCが欠乏したKOマウスは脳における活性酸素種(ROS)の産生が増加することを明らかにした。また、水素を豊富に含む水素水は、VC欠乏マウスの脳におけるROS産生を抑制することを報告した。しかし、脳以外の組織において簡便な抗酸化能評価系が求められる。本年度は、VC欠乏KOマウスの全身組織におけるROS産生能を検討した。 4週齢のKOマウスと野生型マウスをVC欠乏食にて飼育し、飲料水からマウスが1日に必要とするVC量(7mg)を与える群と与えない群の4群(各群5匹)に分けた。VC投与、非投与7週間後、14週間後に各マウスを解剖し、全身の組織を摘出した。組織破砕液におけるROS産生能は、ROS検出蛍光試薬carboxy-H_2DCFDAを用いて測定した。VC濃度は、HPLC-電気化学検出器を用いて測定した。VC非投与7週間および14週間後において、KOマウスVC非投与群の各組織中総VC濃度は、KOマウスVC投与群の1-9%にまで低下した。KOマウスVC非投与群の膵臓および腎臓におけるROS産生能は、VC非投与14週間後ではKOマウスVC投与群に比べて31-34%有意に増加した。また、7週間および14週間後において、KOマウスVC非投与群の胃、十二指腸、精巣脳、心臓、足底筋、平目筋におけるROS産生能は、KOマウスVC投与群に比べて27-108%の有意な増加が認められた。 本研究から、VCが欠乏したSMP30/GNL-KOマウスの様々な組織において、ROS産生は増加することが示された。今後同試験系を用いることにより、サプリメントや機能性食品の抗酸化能を簡便に評価することが可能となろう。
|