非ウイルスベクターによってin vivo腫瘍組織で遺伝子発現を実現するためには、PEGなどの修飾によるベクターの生体内での安定性と腫瘍への蓄積性の獲得、また腫瘍組織での高い遺伝子発現活性が必要となるが、安定性・蓄積性の向上と遺伝子発現活性の上昇は相反する(PEGのジレンマ)。そこで血中滞留素子として機能し、かつ腫瘍組織周辺で特異的にPEGがベクターから解離する機能素子として、腫瘍特異的に発現がみられるMMPにより認識および分解されるペプチド配列をPEGと脂質の間に挿入したPEG脂質誘導体(PPD)を開発した。 本研究では、PPD修飾したMEND(PPD-MEND)の更なる活性の向上を目的に、細胞内動態の制御による機能向上を試みた。pH応答性膜融合性ペプチドであるGALAのコレステロール誘導体をMENDの脂質エンベロープに導入し、in vitro培養細胞で評価しGALAの修飾量などの最適化を試みたところ、GALAを導入したPPD-MEND(GALA/PPD-MEND)は、従来型のPPD-MENDと比較して、標的タンパク質に対して高いノックダウン効果が示され、PEGを修飾していないMENDと比較しても同等のレベルであり、この結果はエンドソームの脱出促進により、より多くのsiRNAを細胞質へ送達したことを示唆し、細胞内動態制御による機能向上が確認された。また、担癌モデルマウスの腫瘍組織へGALA/PPD-MENDを局所投与したところ、PEG未修飾MENDと比較して有意に高い標的タンパク質のノックダウン活性を示した。以上の結果から、GALAやPPDを修飾したMENDはin vivo腫瘍環境において機能を発揮し、MENDの機能向上に有用であることが明らかとなった
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