JCV後期遺伝子の細胞特異的な発現制御機構の有無と早期タンパク質TAgの関与を調べるため、後期遺伝子の全長を様々なプロモーターを持つ発現ベクターに挿入し、これらをTAg発現ベクターと共に感染許容細胞であるIMR-32細胞、および非感染許容細胞であるHEK293細胞、HeLa細胞に導入し後期タンパク質であるAgnoproteinの発現を検討した。その結果、TAg存在下においてIMR-32細胞においてのみ後期タンパク質の発現が顕著に増強した。しかしながらこれらのTAgによるタンパク質発現増加は後期遺伝子のみならずコントロールとして用いたGFP遺伝子を挿入したプラスミドでも同様に見られたことから、細胞特異性は認められるものの後期遺伝子特異的ではないことが判明した。また、今回用いたCMVプロモーター、CAGGSプロモーター、EFlaプロモーターいずれにおいても同様め結果が得られたことから、TAgはプロモーター非特異的にプラスミド由来のタンパク質発現を亢進させる可能性が示唆された。さらにIMR-32細胞における後期遺伝子のmRNA量をPT-PCRを用いて検討したところ、TAg存在下においてスプライシングされた後期遺伝子のmRNA量の増加が見られた。これらの結果から、JCウイルスTAgはIMR-32細胞特異的に、プラスミド由来遺伝子のプロモーター非特異的な転写を亢進している可能性、もしくはmRNAの安定化、分解抑制に寄与している可能性が示唆された。
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