本研究では、H5N1インフルエンザウルス感染者は、鳥インフルエンザウイルスに対するレセプターを上部気道に発現している特殊な人であると仮定し、これを立証する研究を遂行している。 本年は、昨年度確立した手法を用いて、まず、鳥インフルエンザウイルスの宿主である鳥類、つまりニワトリおよびアイガモの呼吸器および腸管に発現する糖鎖レセプターをSNAおよびMAAレクチンにより染色した。その結果、鳥類でもヒト型および鳥型のレセプターが混在していることが明らかとなった。さらに、動物の週齢、系統によっても若干の分布の差異が認められたため、これら鳥類におけるウイルス増殖と、レセプター分布の相関を調べる必要があることがわかった。昨年と同様に、ヒトのサンプルを用いたレクチン染色を試みたが、部分的に確認され、α2-6のヒト型が確認された。しかしながら、検出感度が悪く、生体からのサンプリングはバイオプシーなどある程度の細胞量が必要であることがわかった。 ヒトのシアル酸転移酵素(ST)の解析に関して、健常ヒトの解析を昨年度実施した。今年度実施予定の、H5N1ウイルスに感染した人の臨床サンプルの入手は、豚由来H1N1パンデミックの発生により、当初の予定と異なり、期間内に入手できなかった。 本研究では、ヒトの臨床サンプルの入手が重要であったが、パンデミックの発生により、影響を受けた。したがって、動物のサンプルからヒトでサンプルが得られた際にすぐに解析ができる方法を確立することができた。今後も、交渉を引き続き進め、サンプルを得た後に解析を進めていく予定である。
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