免疫組織学的検討でGIP陽性細胞は常に転写因子のPax6、Pdx1を共発現していた。ヒト、ラット十二指腸においてPdx1はGIP陽性細胞だけでなく多くの粘膜上皮細胞で陽性であった。このことは、Pdx1のみでは、GIP発現に不十分であることを示唆している。一方Pax6の発現はほぼGIP陽性細胞に限定されていた。ラット空腸では、Pdx1はGIP陽性細胞にのみ発現していた。回腸では約30%のGLP-1陽性細胞がGIPを共発現しており、それらはPax6、Pdx1とも陽性であった。このことはPdx1がGLP-1の発現を抑制しないことを示している。一方、GLP-1陽性GIP陰性細胞ではPax6のみ陽性で、Pdx1は発現していなかった。興味あることにマウス網膜でもGIPの免疫染色陽性細胞を認め、GIP陽性細胞はPax6とPdx1を共発現していた。小腸内分泌細胞株であるSTC-1では、Pax6、Pdx1の発現を免疫染色およびRI-PCRで認めたが、IEC-6ではすべて陰性だった。humanGIPプロモーターによるルシフェラーゼアッセイでの検討では、STC-1はIEC-6に比較し40倍のGIP転写活性を示した。IEC-6ではPax6及びPdx1の強制発現によって、それぞれ6倍及び4倍のGIP転写活性が上昇した。また、STC-1においてGIP-184からGIP-145のプロモーター切断によって転写活性は90%低下した。STC-1において優性阻害型Pax6、Pdx1の強制発現はGIP転写活性をそれぞれ約70%、20%抑制した。ゲルシフト法によりPax6及びPdx1が近位GIPプロモーター(-193/-138)に結合することを確認した。一方、Pax6の強制発現はプログルカゴンの転写活性を25倍上昇させたが、Pdx1は上昇させなかった。STC-1において優性阻害型Pax6はプログルカゴン転写活性を約70%抑制したが、優性阻害型Pdx1は転写活性に影響を与えなかった。以上より、Pax6並びにPdx1がともにGIP遺伝子発現に重要な転写因子であることが示唆された。
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