研究概要 |
昨年度の研究において、10テスラ(T)という強力な定常磁場に曝された造血幹・前駆細胞が、赤血球系及び巨核球系分化を特異的に亢進し、その関連遺伝子の発現も有意に上昇することを研究代表者は明らかにした。これら分化特異性は細胞がサイトカインを自己産生して応答するオートクラインが関与していると仮説を立て、今年度は同一の定常磁場曝露条件を用いて造血幹・前駆細胞から分化増殖に関わるとされる産生サイトカイン量を測定した。 これら実験の全ては弘前大学大学院医学研究科倫理委員会の管理下において実施した。造血幹細胞は協力病院において、医師から提供者及びその家族に対し、臍帯血採取に関するインフォームドコンセントを行い、分娩後安全に採取可能な場合に限った臍帯血から分離・精製した。 造血幹・前駆細胞は、in vitro培養条件下にて磁束密度10Tを16時間曝露した後、培養上清を回収し、サイトカイン濃度をBio-Plex装置(Bio-Rad)を用いて測定した。その結果、強定常磁場曝露条件下では、疑似曝露コントールに比べIL-1raは1.99倍,IL-8は1.90倍,MCP-1は1.68倍,MIP-1aは1.80倍,PDGFbbは2.81倍とそれぞれ上昇した。一方でGM-CSFは0.42倍と減少した。 本研究から、強力な定常磁場は、ヒト造血幹・前駆細胞におけるサイトカイン産生に変動を与えることが明らかとなり、これら因子が、昨年度報告した強力な定常磁場が及ぼす赤血球系及び巨核球系分化への特異的亢進に関与していることが示唆された。
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