研究概要 |
本研究の目的はこれまでに知られていない歯の発生におけmicroRNA(miRNA)の発現状況や、その役割についての解析である。我々はこれまでに胎生16日、出生後1日、3日のマウスの歯胚よりmiRNAを抽出し、ジェノパールmiRNAアレーを用いて、miRNAの発現パターンを明らかにしていた。このうち歯胚でのmiRNA発現プロファイルと、他の組織(脳、肺、腎臓、肝臓、皮膚、骨、筋肉、精巣等)のmiRNAの発現様式と比較し、歯胚に特異的なmiRNA候補の同定を行ない、特徴的な発現をしている66のmiRNAを同定した。また歯胚形成において極めて重要な役割を担うGJA1に特異的なmmu-miR-1、101a、101b、200a、338-3p、376a、434-3を同定し、このうちmmu-miR-1、101a、376a、434-3pが胎生16日に比較して出生後3日で特徴的に発現量が変化するのを確認した(International Association for dental research, trontoにて発表)。次にmmu-miR-1、mmu-mir-127について各ステージのマウス歯胚における組織内発現をin situ hybridization法にて確認した(インターフェイス口腔健康科学国際シンポジウムにて発表)。さらに各ステージの歯胚から抽出したtotal RNAから、分化過程におけるmiRNAの発現についてreal-time miRNA PCR法を用いて解析を行ない、各ステージ間における有意な差を確認した。これらの結果はmiRNAが歯の形成において重要な役割を担うことを示唆しており、歯の発生研究において極めて重要な知見が得られた。今後、歯原性上皮細胞株SF2を用いてmiRNAをノックダウンし、歯胚の発生段階に特異的な分子の発現の変化を検討していく予定である。
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