本研究では炎症における自然免疫応答の制御機構を新規抑制性レセプターMAIR-Iの機能解析を通じて明らかにすることを目的とした。具体的には本研究期間内に、1)敗血症時の自然免疫系担当細胞の機能におけるMAIR-Iの役割の解析、2)MAIR-Iがアポトーシス細胞を認識することによる免疫応答の解析、3)アポトーシス細胞上に発現するMAIR-Iリガンドの同定を行うことを掲げた。 既に、MAIR-Iは自然免疫系担当細胞である肥満細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞に発現し、アポトーシス細胞認識していることを見出しており、更にMAIR-I遺伝子欠損マウスでは敗血症における生存率が亢進し、血中の炎症性サイトカインが低値を示すことを明らかにしていた。平成20年度には、自然免疫系担当細胞であり、かつMAIR-Iが発現している細胞である、肥満細胞、好中球、マクロファージを欠損させたマウスを用いることによって、これらの細胞のうち、肥満細胞がMAIR-I遺伝子欠損マウスの敗血症における生存率の亢進に寄与していることを明らかとした。更に、MAIR-I遺伝子欠損マウスでは好中球の腹腔への浸潤が増加していることが見出され、この好中球の浸潤の増加によって細菌のクリアランスが亢進し、生存率が改善していると考えられた。平成21年度には更に、骨髄由来肥満細胞をLPSで刺激するといったin vitroの解析を進め、MAIR-Iを欠損していると肥満細胞が刺激を受けた際に早期にサイトカインやケモカインをより産生し、後期には沈静化している事を明らかとした。更にその刺激伝達経路を現在解析しており、論文としてまとめ、雑誌に投稿準備中である。本研究はMAIR-Iの自然免疫応答における制御機構を明らかにすることによって、敗血症の病態を解明し、新たな治療への道を開く可能性があり、重要な意義があると考えられた。
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