研究概要 |
我々は、これまでの研究にてDNAM-1(CD226)が腫瘍細胞に対する細胞障害活性を有するのみならず(Kai et al, J Exp Med, 2008)、CD4T細胞の分化・増殖やマクロファージなどの炎症細胞の遊走に関与している接着分子であることを報告してきた。今回、急速進行性糸球体腎炎(半月体形成糸球体腎炎)の形成にDNAM-1が関与している可能性を推察し、検討を行うため、我々が作成したDNAM-1遺伝子欠損マウスを用いて研究を継続している。まず、半月体形成糸球体腎炎の系の確立であるが、マウスをpolyclonalなrabbit抗体にて免疫1週間後、rabbit-anti GBM抗体(Ueda et al, Kidney Int, 2003)をマウスに免疫し、マウスにおける半月体形成糸球体腎炎を惹起した。免疫1〜2週間後には尿蛋白は+/-から2+程度に増加しており、腎炎が惹起していると考えられた。 次に、野生型マウスあるいはDNAM-1遺伝子欠損マウスをそれぞれ5匹ずつ用いて半月体形成糸球体腎炎を惹起したところ、野生型マウスは5匹中4匹の死亡が確認され、DNAM-1遺伝子欠損マウスは5匹中2匹の死亡が確認され、致死率に差が認められた。これらの結果からは、DNAM-1遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比し腎炎惹起の程度が軽度である可能性が考えられる。詳細な尿化学所見や病理組織像を含めた分子学的機所に関しては現在検討中である。今後は腎炎惹起数を増加させ、有意な所見であるかを検討する予定である。本研究により、半月体形成糸球体腎炎へのDNAM-1の関与が明らかとなり、将来的な治療に結びつくことが期待される。
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