研究概要 |
同種造血幹細胞移植時の移植片対宿主病(GVHD)における免疫調節機構の分子メカニズムにせまる目的で、T細胞の分化・機能制御に必須の役割を担うNotchシグナルに焦点を当て研究を行った。平成21年度はマウス同種移植系におけるドナーT細胞におけるNotchシグナルの機能解析を行う為に、生体マウスからの骨髄及び脾臓から造血幹細胞・T細胞の効率的分離法・T細胞への遺伝子導入法を確立した。成体マウスから骨髄・脾臓細胞を採取した後、FACSまたはMACSによる単離を行った。条件検討の結果、T細胞を除去した造血前駆細胞の単離にはFACSを用い、T細胞単離にはMACSを用いる方針とした。次に移植用T細胞に遺伝子修飾を行う為にレトロウイルスを用いた効率的遺伝子導入システムを構築した。HES1はNotchシグナルの下流にありリンパ球分化に必須の役割を担う事が報告されている。ヒト正常細胞からクローニングしたHES1遺伝子をレトロウイルスベクター(小野寺雅史博士より供与)に導入し、293gp細胞にエンベロップ蛋白発現プラスミド(PCDNA3-VSVG)と共に燐酸カルシウム法で遺伝子導入した後、超遠心法により、濃縮高力価レトロウイルスを作成するシステムを確立した。また、発現効率を向上させる為の塩基配列修飾を行い(Codon Optimization法,Genscript社に依頼)更に効率的に遺伝子導入を可能となるよう検討中である。このウイルスを用いて単離したT細胞へHES1またはDominant negative typeのHES1の変異体を導入しT細胞の機能解析を進めている。現在移植実験系の構築中であり平成22年度も計画続行の予定である。
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