研究代表者らは受容体型分子SHPS-1ノックアウト(KO)マウスにおいて、自己免疫疾患の発症が著しく抑制されることを見出している。しかしながら、SHPS-1による自己免疫疾患発症の制御機構について碁未だ十分に明らかとはなっていない。そこでSHPS-1ならびにそのゾガンドであるCD47と形成される細胞間シグナル伝達系(CD47-SHPS-1系)による自己免疫疾患に対する制御機構について、SHPS-1を高度に発現している樹状細胞を中心に詳細な解析を行うとともに、抗SHPS-1抗体を用いた治療への応用を目指すことを目的とした。今年度は以下の結果を得ている。 (1)SHPS-1はマウスの二次リンパ節内に存在する古典的樹状細胞(cDC)、特にCD8-CD4+cDCならびにCD8-CD4-cDCに強く発現することが知られている。SHPS-1KOマウスではCD8-CD4+cDCが特異的に減少しており、SHPS-1は樹状細胞の恒常性に重要なシグナル伝達を担っている可能性を示した。 (2)SHPS71KOマウスでは、慢性関節リウマチのマウスモデルであるコラーゲン誘導性関節炎の発症に著しく抵抗性を示すことを見出した。さらに、SHPS-1KOマウス由来樹状細胞によるCD4陽性T細胞のTh17への分化が障害されていることも明らかにした。 (3)CD47とSHPS-1の結合を特異的に阻害する、抗マウスSHPS-1モノクローナル抗体を作製した。この抗体を接触過敏性皮膚炎のモデルのマウスに投与したところ、その発症を抑制することを明らかにした。今後は、SHPS-1抗体を用いた治療について、さらに検討を加える予定である。
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