研究課題
平均寿命が延びるにつれ医療においてがん治療の重要性はさらに高まっているが、近年はゲノム解析の進歩により、癌遺伝子の研究が進み、遺伝子治療の重要性が問われている。本年度は、研究対象としている細胞間ギャップ結合(GJ)を規定する遺伝子群・コネキシン(Cx)の中で、Cx43を悪性中皮腫(MM)に遺伝子導入することで強制発現株を作成し、Cx43がMMに対して単独で緩やかな増殖抑制作用を示し、さらに化学療法薬cisplatin(CDDP)と併用することで、細胞のCDDP感受性が増強することが示された。この結果はRNAi法によって確かにCx43の導入が殺細胞効果の増強に寄与することが示され、またその作用の一端として、がん増殖因子のSrc活性への影響が示唆された。一方、Cxの発現制御がプロモーター領域のメチル化による影響を受けることに着目して、既に有効性が認められている腎細胞癌(RCC)に対するCx32のvinblastine(VBL)耐性改善作用を、脱メチル化薬の一つ、5-Aza-2'-deoxycytidine(5-Aza)を用いて再現できた。すなわち、5-AzaとVBLを併用してRCCに作用させた場合に、5-Aza単独、またはVBL単独の場合よりも増殖抑制作用が増強した。この併用効果は5-Azaの濃度依存的、また時間依存的に確認された。さらにRCCをヌードマウス背部皮下に移植するモデルにおいても、両者の併用によって腫瘍増殖の抑制効果の増強が確認された。以上より、Cxを用いたがん種別の治療法の構築は難治性がんに対して期待されるものであり、また脱メチル化薬を用いた発現回復手法が可能であると期待された。しかし腫瘍移植モデルの結果からはCx以外の因子の関与も少なくはないと判断されたことから、臨床応用に向けてはさらに詳細な検討が必要であると考えられた。
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