近年アレルギー疾患患者が急増しているが、その根治治療法は存在しない。T細胞は「免疫記憶」という特殊な能力をもっており、アレルギー疾患患者においてはアレルゲンを記憶しているメモリーT細胞が存在し続けることが、疾患を引き起こす原因である。したがって、このメモリーT細胞特異的に制御する事は、もっとも効果的に治療でき、副作用も低減できる治療法である。今回私たちが注目するのは免疫調節機能をもつと言われているNKT細胞である。そこで本研究では、NKT細胞によって抗原特異的メモリーT細胞を制御することを目的とする。メモリーCD4T細胞をマウスの体内で作成し、そのマウスにNKT細胞のリガンドであるalpha-ガラクトシルセラミド(α-GalCer)を投与すると一時的にではあるが、CD4T細胞の数が劇的に増加した。中和抗体や遺伝子欠損マウスを用いた実験から、この増加はNKT細胞の産生するインターロイキン2(IL-2)によって主に誘導されることも明らかにしている。さらにα-GalCer投与から一ヶ月後にメモリーTh2細胞の機能を検討したところ、その特徴であるTh2サイトカインの産生能は低下していた。またそのメモリーTh2細胞依存的なアレルギー性気道炎症反応を誘導したところ、α-GalCerを一ヶ月前に投与した群ではその症状が抑制されていた。以上のことから、NKT細胞の活性化はメモリーCD4 T細胞の数を増加させ、特にアレルギー疾患のエフェクター細胞であるメモリーTh2細胞の機能を変化させることがわかっている。
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