2年計画で行う本研究の最終年度である今年度は、昨年度の調査結果を基に作成した家族看護実践における看護師の行動と信念を把握するための質問紙を用いた調査の実施、韓国/中国の看護研究者との意見交換、昨年度のインタビュー調査の学会発表を実施した。 1.インタビュー調査から得られたデータを日本と韓国/中国との相違に焦点を当てて分析した結果、家族観については、《家族の入院中の付き添い》《親の介護に対する子の責任》《家族員間のコミュニケーションのオープンさ》《入院中の患者ケアにおける家族のかかわり》など、家族看護実践については、《付き添う家族に期待する役割》《付き添う家族への看護師の気配り》《患者・家族に看護師自身の情報を開示する程度》などの違いが見出された。この結果について、文化看護学会第2回学術集会にて口演発表を行った。 2.家族看護実践における看護師の行動と信念を把握するための質問紙を作成し、調査を実施した。対象は高齢者への看護を実施している看護師とし、家族看護実践における行動と信念を尋ねる質問項目は病院看護師74項目、訪問看護師62項目であった。質問紙を関東近県の訪問看護師408名、病院看護師310名に配布し、訪問看護師148票(回答率36.3%)、病院看護師240票(77.4%)の回答が得られた。 3.翻訳した調査票を用いて韓国/中国の研究者と討議した結果、韓国では日本のように介護サービスが充実していないため療養場所の選択肢がないこと等システムの違いや家族看護の概念が様々であることが指摘された。そのため、韓国/中国で働く看護師に調査票を用いて回答を求めることに加え、家族看護に関する意見の聴取を引き続き行う。 以上の取り組みを通じ、日本の家族看護実践の特徴及び、日本・韓国・中国の家族看護のあり方の一端が明らかになった。
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