研究概要 |
本研究は柔軟な合成経路の開発によって可能となるダフナン型新規機能分子の創成を視野に入れ、O, S-アセタールから得られる炭素ラジカルによる炭素環構築法の開発と、ダフナン型ジテルペン、レジニフェラトキシンの全合成を目的とした。 平成20年度は、分子内ラジカル反応による炭素環構築法の開発に重点を置いた。すなわちO, S-アセタールを有する様々な基質を合成し炭素環構築における反応性の検討を行った。分子内にラジカルアクセプターを有するO, S-アセタールは対応するスルフィドからのPummerer反応、Horner-Wadsworth-Emmons反応によって種々合成した。合成した基質を用いてAIBN存在下、トリブチルスズヒドリドとともに80度に加熱するという条件化で、ラジカル反応を検討した。その結果、本反応では不飽和エステルをラジカルアクセプターとして有する基質に関しては炭素環を高収率で与えるものの、より反応性の高い不飽和ジエステルを有する基質では炭素環を与えない事が分かった。そこで、より穏和な条件下での炭素環構築を目指し、O, Se-アセタールからのラジカル反応を検討した。O, Se-アセタールの合成は一般に困難と考えられているセレニドからのPummerer反応を最適化し調整した。ラジカル反応はトリエチルボラン存在下、トリブチルスズヒドリドを0度で作用される事によって実現し、不飽和ジエステルを有する基質においても良好な収率で炭素環を与えた。以上の結果を踏まえて、O, Se-アセタールを有する基質を重要中間体に設定し、レジニフェラトキシンの全合成を開始した。現在、不斉Diels-Alder反応を鍵として、レジニフェラトキシンのA環に相当するシクロヘキサンの立体選択的な構築に成功している。今後は、O, Se-アセタールを用いた炭素環構築法のさらなる開発とレジニフェラトキシンの全合成を行なう。
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