難治性固形癌に対する免疫療法の奏功性を抑制する因子として、腫瘍微小環境を構成する腫瘍浸潤性マクロファージ、未熟ミエロイド細胞の寄与が注目されている。 本研究において第1に、上皮性増殖因子スパーファミリーのひとつMFG-E8が、腫瘍内マクロファージ、未熟ミェロイド細胞で高率に産生させることを見出した。更にMFG-E8遺伝子発現骨髄細胞を移植したMFG-E8ノックアウトマウス(MFG-E8骨髄キメラマウス)を用いたメラノーマ腫瘍皮下発症モデルにて、腫瘍内の樹状細胞数の減少や活性抑制、腫瘍特異的細胞障害性リンパ球機能の低下が、コントロール遺伝子導入骨髄細胞を移植したキメラマウスと比較して顕著であった。更に、骨髄細胞由来MFG-E8は、腫瘍血管新生、腫瘍細胞の抗がん剤、分子標的療法による細胞死抵抗性に有意に相関していた。またin vivoで皮下摂取したメラノーマは、MFG-E8骨髄キメラマウスでは、コントロールキメラマウスと比較して腫瘍径増強を認めた他、その30%に肺転移を認めた。以上より、骨髄ミエロイド細胞由来のMFG-E8は、腫瘍内免疫応答、血管新生、腫瘍増殖能を調節することで、腫瘍進展、転移能活性を惹起する重妻な因子であることを明らかとした。 第2に、申請者はMFG-E8抗体作成を施行し、その特異的阻害活性を検証している。今後この抗体を併用することにより、腫瘍微小環境内の腫瘍免疫応答の回復や抗がん剤による細胞死抵抗性の克服が可能であるかin vivo、in vitroの実験系で検討していくことで、MFG-E8阻害剤の臨床応用の可能性につき検討していくことを予定している。
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