研究概要 |
進展した動脈硬化病変を持つ血管の外膜では、発達した外膜微小血管(vasa vasorum, VV)を認めるが、病変が成長する経過でVVがどのように増殖するのか明らかになっていない。また、通常血管は周囲脂肪組織に覆われており、脂肪組織は様々なサイトカインを分泌し心血管病に影響するといわれているが、近接する血管に直接的に影響を及ぼすのかは明らかになっていない。本研究では、血管周囲脂肪組織とVV、血管本管の解剖学的、機能的関連を病変形成の経過も含め明らかにすることを試みた。VVは径10μm以下の微小構造であるため同定自体が困難であるが、本研究では以下の三つの手法を検討したところ、VVを明瞭に描出することが可能となった。(1)凍結標本を通常より厚切りにし、免疫蛍光染色で内皮細胞を標識した後、共焦点顕微鏡で撮像して画像を三次元構築する。(2)液状プラスチック樹脂を注入して血管鋳型を作成する。硬化させた後、周囲組織を溶解して走査電子顕微鏡で微小構造を観察する。(3)血管内皮マーカーであるトマトレクチンを、検体採取前に灌流して染色し、切片作成後に発色させる。これらの手法を用いて、進展した動脈硬化病変を持つ高脂血症マウスの大動脈を観察したところ、血管周囲脂肪組織から動脈硬化病変内に、微小血管が直接侵入していると思われる像が得られた。次に、若年から高齢までの各週令の高脂血症マウスを用い、動脈硬化病変進展と、VV増殖の過程を経時的に観察したところ、VV増殖は初期の病変には認めず、病変が進展してから認められた。今後、血管新生因子や血管新生阻害因子を血管外膜に局所投与して外膜微小血管増殖を調節した場合の、血管本管の動脈硬化病変形成に及ぼす影響を検討する予定である。
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