研究課題
癌細胞がどのように起始リンパ管に侵襲しリンパ管内を進展するのかという機序は未だ解明されていない。本研究では「リンパ行性転移の場ではリンパ管内皮細胞間隙の開大がみられ、癌細胞のリンパ管侵襲を受けやすくなっている」という仮説が成立するかの検討を目標とした。起始リンパ管の評価として、マウス横隔膜リンパ管の腹腔開口部(Stomata)を用い、この径の変化に着目した。また、癌において炎症と共通したリンパ管変化を認めることが多いという知見をもとに、癌細胞を用いた観察の前段階として炎症時のリンパ管変化に注目して観察した。前年度までに慢性炎症時のStomata開大を明らかにしていたが、今年度は時間経過を追って観察したところ、Stomata開大は催炎剤投与開始直後ではなく、少なくとも3日目以降に起きており、また複数のStomataが融合して大きなリンパ開口部を形成していることがいることが示唆された。また、Stomata開大のメカニズムを解明するために、マルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブを投与してみると、炎症時のStomata開大が非炎症時レベルまで抑制された。この結果はVEGF-Aがリンパ管内皮間隙の開大に関わるとした当初の予想に矛盾しない。Stomata開大として観察されたリンパ管内皮細胞間隙の開大のメカニズムの探索、および内皮間隙開大と癌細胞のリンパ管侵襲の関連については今後さらに研究を進めるべき課題である。
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Blood 115
ページ: 418-429
Journal of Cell Science 122
ページ: 3923-3930