研究概要 |
【背景と目的】ザンビア国ルサカ市は毎年11月から翌年5月までの雨期において患者数6,000名を超す大規模なコレラ流行が報告されてきた。これまでの調査では、ルサカ市内のスラム地域におけるコレラ流行と衛生施設の不備や井戸水の摂取との関連性が示唆された。本研究は、ルサカ市全域のコレラ流行に関し、降雨ならびに都市排水システムとの関連をGISを用い解明することを目的として実施された。 【研究経過】ザンビア国ルサカ市の2005年-2006年のコレラ流行シーズンに報告された患者6,045名のうち、GPS(Global Positioning System、全地球測位システム)を用い居住場所を測位した2,590名の患者を研究対象とした。コレラ流行の伝播特徴は、Space-time permutation法を用い、患者分布の時空間集積を解析した。一方、コレラ流行と排水システムめ関連は、調査対象地域メッシュ地図(500メートル)を作成し、各区画内の水利解析による表面流水ならびに排水溝の長さとコレラ患者数を積算し、回帰分析を用い解析した。 患者分布地図より、95%以上の患者がルサカ市西部に偏在し、時空間解析による検定では、それら地域内に有意なコレラ患者の集積が認められた(P<0.01)。コレラ流行と排水システムとの関連性の解析を試みた結果、排水システムの完備度が高い程、コレラ患者数が少なくなる有意な負の関連性が示唆された(P<0.01)。途上国におけるコレラ制御には、先行研究によって示唆された安全な給水やトイレなどの衛生施設とあわせ排水システムのインフラ整備が重要な要因であると考えちれる。本研究により、行政のインフラストラクチャ整備の重要性が示唆され、長期的なコレラ制御対策に関する科学的根拠が示された。 【研究発表】本研究成果は、American Journal of Public Health誌に掲載が決定し、また、第67回日本公衆衛生学会総会において発表され、優秀ポスター賞を受賞した。
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