【研究目的】 本研究の目的は、バイオマテリアルを用いて骨再生を図った場合に、どのような破骨細胞と骨芽細胞のカップリングが成立するか細胞学的に解析することである。さらには、誘導される再生骨の「骨質」についても評価を行う。 【研究結果】 平成20年度の研究では、これまでの実験系(Kojima et al ; J Bone Miner Metab 2007)と同様の骨欠損を作製し、同部位にβ-TCP顆粒(オリンパスバイオマテリアル社・オスフェリオン)を補填した場合の破骨細胞と骨芽細胞の組織学的動向を経時的に観察し評価した。その結果、β-TCPは破骨細胞による吸収が先行し、その後に骨芽細胞の定着、骨形成が誘導されるカップリングのプロセスを経て新生骨が形成されると推測された。また、その後の骨リモデリングにより徐々に新生骨に置換されることで、緻密な骨基質形成を可能にすることが示唆された。平成21年度の研究では、上記プロセスで生じた再生骨の「骨質」について、組織化学的観察、電子顕微鏡観察ならびにEPMAによる元素マッピングにより評価を行った。その結果、新生骨内の骨細胞・骨細管系ネットワークの構築が経時的に整然と進行することがわかった。また、電子顕微鏡観察により新生骨のコラーゲン線維が整然と密に走行していることが確認できた。さらには、EPMAによるCa、Pの元素マッピングでは、新生骨と既存骨が同程度のCa、P濃度を示すことが明らかとなった。したがって、β-TCPによって誘導される新生骨は、既存骨同様の骨質を有する緻密骨であることが確認でき、臨床における有用性が示唆された。
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