本研究の目的は腹腔内IL-5産生細胞の同定とIL-5に制御されるB-1細胞が関与する免疫疾患の予防や治療法開発の基盤を得ることである。初年度の研究から腹腔において少なくとも2種類の免疫担当細胞がIL-5を産生しており、一つはCD3_ε陽性CD4陽性のヘルパーT細胞であることが判明した。今年度にはもう一方の細胞の表面抗原をフローサイトメトリーで解析した結果、幼若な細胞に発現するc-kitを発現していることが明らかとなった。研究に汎用される2種類のマウスストレイン(C57BL/6とBALB/c)を用いてIL-5産生細胞を検出した結果、これらのマウスでIL-5産生細胞の割合が大きく異なっていた。C57BL/6ではc-kit陽性細胞が、BALB/cではヘルパーT細胞が主要なIL-5産生細胞であり、BALB/cにおいてはIL-5産生の亢進が観察された。BALB/cマウスはアレルギー応答がC57BL/6に比べ増悪していること、遅延型アレルギー疾患の一種である接触性皮膚過敏症はB-1細胞が産生する抗原特異的イムノグロブリンMにより炎症反応が惹起されることから、BALB/cマウスではB-1細胞が増加していると予測された。BALB/cマウスの腹腔細胞の解析ではC57BL/6マウスの約3倍のB-1細胞が観察され、B-1細胞のIL-5応答性も亢進していた。さらには抗原特異的B-1細胞の増加も認められた。これらの結果から、BALB/cマウスにおける接触性皮膚過敏症の増悪は腹腔でのIL-5産生細胞と産生量の違いから生じるB-1細胞の増加が一因ではないかと思われる。この結果はヒトのアレルギー応答への感受性の違いを説明できる可能性もあり、臨床応用の観点からも極めて興味深い研究成果である。
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